5/11(fri)@サンポートホール高松・大ホール

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text&photo●aco nagata
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Keep on Dreaming all your life!…いつまでも夢を見つづけて…

●日本とアメリカ。ダブルスタンダードを持つ個性派シンガーソングライターとして、昨年は初の武道館弾き語りライブを成功させ、年末には紅白歌合戦への出場も果たしたアンジェラ・アキ。今、最も脂の乗ったアーティストの一人だ。彼女のステージを見るのはこれが2度目、昨夏の野外という過酷な状況が記憶に新しいが、今回はピアノ一台のみのツアー。この広いステージをどんな風に使うのか?またどんな演目で楽しませてくれるのか?自然と期待も膨らんでしまう。この日もチケットはソールドアウト、早くから胸を躍らせ座席に着くお客さんの姿が目に付く、客電が落ちると“おぉ〜”という歓声と大きな拍手が。舞台袖からゆっくりと彼女は現れた。
Tシャツにジーンズ、そしてお気に入りの黒いコンバース。いつもと変わらない姿のアンジーがそこにいた。シンプルなステージには下手側から半分ほど幕が降ろされ、真っ赤なライトアップが。逆に上手側にピアノが一台。こちらはブルーのライトアップ。実に対照的な構成だ。オープニングは未発表曲『A Song For You』から代表曲『HOME』。卓越した存在感のあるヴォーカル。そしてダイナミックなピアノプレイ。まだ2曲しか聴いていないというのに圧倒されて言葉が出ない…。そう思っていると、間髪入れずに聞き慣れた言葉で喋り始める彼女。「サクラ色ツアーへようこそ!最初から言うとくけど、私めちゃめちゃ喋るんで、皆さんひかんといてください。ほんで、弾き語りライブに聴き方のスタイルはないんで、皆さん自由に最後まで楽しんで行って下さいね」。本格的に全国を回るというツアーは今回が初めて、しかも初の高松。お隣徳島がホームタウンとあって、心なしかMCでは阿波弁が勢いを増す。あぁ和むなぁ〜このギャップ(笑)。「いくよ〜!」の掛け声でアップテンポな『奇跡』、そして『Kiss Me Good-Bye』。「嫌な思い出は今日全部ここに吐き出して、床に置いて帰ってな!後で清掃の方が片してくれると思うんで」とキュートなジョークも。毎回ライブではリクエストを募り、会場で披露するという恒例の洋楽カバーコーナー“アンジェラ・アキの(勝手に)英語でしゃべらナイト!?”では、何とマドンナの『Like A Virgin』を披露。大きな垂れ幕がステージ上部から降りてくるとそこにはサビの歌詞が。お決まりの(hoo!)までちゃんと書いてある辺りがアンジーらしい。「皆、ここのカッコ・フー!はめちゃめちゃ大事やから是非一緒に歌って!」と、客席を巻き込んで大きなコール&レスポンス。実に楽しい一時だった。その会場の熱をゆっくりと冷ますように『大袈裟に愛してる』『お願い』『宇宙』など幻想的な世界観あるナンバーが続く。代表曲『This Love』『心の戦士』には会場の空気が引き締まり、気付けばアンジェラ・アキという世界の中にどっぷりと包まれているような感覚になった。そして、あの名曲が…。3年前に椎名林檎の武道館ライブに感動し、武道館ライブを目標に頑張って来たこと、恋愛、失恋、孤独、音楽、夢、ふるさと…色んな事を学んだワシントンDCでの思い出。彼女の言葉でゆっくりと綴られたサクラ色への想いは、聴いているだけで涙が溢れた。「皆さんも自分の青春時代を思い出しながら、あの頃の自分があったから今の自分がいる事を忘れないで欲しい。そして夢を見続けて欲しいと思います」と、武道館で披露したものと同じバージョンの『サクラ色』を歌った。そこにはCDには収録されていない「Keep on Dreaming all your life!」というメッセージが。仕事を忘れるほどに感極まり、我に返り辺りを見ると涙を拭うお客さんの姿が目に付く。改めて歌の持つ力の素晴らしさを実感した一時だった。そして本編ラストはもちろん『MUSIC』。アンコールでは『愛は勝つ』のカバー、『孤独のチカラ』で会場を沸かせステージを後にした。彼女のライブを見ていたら色んなものが一気にあふれ出した。孤独や憎しみ、後悔…そういったものを経験し、乗り越えたからこそ表現できる力強い夢や愛の形。それはアンジェラ・アキ流の応援ソングなのだと。彼女の歌にはそんな大きな器と、全てを受け入れ癒す力があると思う。まるで聖母マリアみたいに偉大で流麗な真実の力。夢を叶えて!という強い言葉ではなく、どちらかというと生活していく上で自然と寄り添っていけるような…“夢を見続けて行く事が重要”と言ったアンジーの「Keep on Dreaming all your life!」は、私の大好きな言葉の一つになりそうだ。