「空前絶後のカリスマ、陽水さんのコンサートレポート?!」
息の長い活動と絶えざる人気故にもはや天文学的に増殖した(今尚増殖中)あまたファンを
さておいて、こともあろうか一DJの私にオファーがきた時の驚きとプレッシャーたるやお察しいただけるであろうか。まさに“とまどうペリカン”ならぬ“面食らう老雀”の心境・・・。
2月11日(火)建国記念の日、ここ高松は霧雨模様のグレースカイ。筆者的にはなんとも陽水チックなシチュエーションではないか。(極めて主観的にて深謝)いやが応にも“あやしい夜”
を期待してしまう自分がそこにいた。香川県県民ホール1階最後部スロープを昇りつめたところステージ向かってやや左方、これが今夜の指定席。ステージとの距離ざっと30メートル
高低差約10メートル、かくしてステージ中央の彼を原点にした3次元座標軸の中に筆者は位置付けられ、そこから生まれる我らの小宇宙は宿命付けられたのでありました。
予想通り年齢層は高い。男女比6:4で女性といったところ?いずれにしても各々、青春の
“心もよう”をリアルタイムで彩ったであろう名曲の数々にしばし現実を離れて「どっぷり
浸らせてもらいます!」やる気マンマンの態。とはいえ香川の土地柄かとりたてての興奮も
なく、かくしてごく自然に開幕を迎えたのだ。6時7分定刻を少々過ぎた頃、我らがヒーロー登場!Opは“傘がない”小雨の高松に合わせての選曲か。タープはたまた天蓋のような布バ
ックにシンプルなスリットで浮かび上がる光と影、泣きのギターが唸りミニマルでスタイリ
ッシュな幕開けだ。あまりにも有名な2曲の後に彼が発した第一声は「イエイッ!」(笑)
これで一気に初体験の緊張がほぐれましたよホント。(そう、お恥ずかしながら筆者この夜が陽水さんのコンサート初参加だったのです。)ご当地ネタも交えつつ独特の陽水節で場内つか
みもバッチリ、後はいかに自分を小宇宙にシンクロさせて楽しむか。生来求めよ・さらば与えられんを旨として生きている筆者にはさして難題でもなかったようで。M4の“ダンスはう
まく踊れない”は個人的にも大好きな一曲。陽水さんの妻でもある歌手の石川セリさんに書
き下ろした77年の作品、確か女優高樹澪主演のTVドラマで使われていて、それまでのどんなTV主題歌より私のツボにハマッたと記憶している。彼が得意とする女性言葉の、むしろ
女性には出せないエロティシズムに微妙なジェラシーを感じるが、嫌悪と猥雑の一歩手前で
留める読みの鋭さには脱帽だ。M7のLOVEから往年の洋画に話題を向け(気取って洋画を見ていた?ちょっとハイソな井上少年、バックボーンのくだりでまたまた脱線、MCまでもの
“まったり感”がたまりません。)自然な成り行きで歌い始めた“映画に行こう”は筆者担当の映画番組でよくかけるお気に入りの一曲。完璧に一緒に歌えたのは実はこの曲だけだっ
たなんていう人は少ないだろうなあ。
70年代フォーク世代のサウンドを一言で語ることはできない。時代を色濃く反映した歌詞で当時を彷彿させてくれるかぐや姫やタクローのメッセージ性や匂いに比べ、彼の世界(小宇宙)はなんと不思議なまでに“無臭”なことか!独自のフィルター(美学)にかけてかけて
はじめて成せるワザだろう。そこには四畳半フォークの貧乏臭さや悲哀の微塵もない。時代
をリアルタイムでなぞって来た同世代のファンにとって、サウンドマジックによって同じよう
にタイムスリップしても、陽水さんのそれは唯一無二の時代観を醸す。音楽好きを語る輩も、
たとえ彼の鼻にかかったような独特の歌い方がダメとのたまう御仁を以ってしても、陽水の前に陽水はなし、彼の後に彼なしの絶対的評価に異論を唱える者はありようもないハズ。だ
って彼の歌のあのスケールは何?詩人にしてメロディーメーカーの彼の無限の世界観と音の
広がりはどこからくるの?これまで敢えて語らなかったが、時代の中で決して画一的に染ま
らない交わらない彼の世界に、筆者は昔から恋していたのかもしれません。
M13ファイナル・ラブソングあたりから胸の中で“来るべき時”を予感する。“最後のニ
ュース”“海へ来なさい”「時」は来た、完璧だ!上質のベルベットにくるまれるような至福のひとときを享受しつつコンサートはクライマックスへ午後7時50分過ぎ、陽水系宇宙の彼方でスーパーノヴァ爆発!
― 閑話休題 −
行かなくちゃ・・
傘がなくても探し物が見つからなくても
次もきっと“貴方”に会いに行かなくちゃ
みんながそう心に誓って香川県民“小宇宙”ホールを後にした。次回は絶対大切な人と来よう
・・・いつになく素直な自分がいる。ありがとう、素敵な時間を“今夜私に”
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