interview

 

松山市出身の22歳。鬼束ちひろを生んだVirgin Tokyoのオーディションでグランプリを獲得し、4月に松山で行われた鬼束ちひろのライブではオープニングアクトとしてデビュー曲『スミレ』を堂々と披露。一瞬にしてその場の空気を変える存在感。"唯一無二"という言葉を容易に連想させてくれる人に久々に出合った気がした。「癒しブームに負けるな」と最後に言い残した彼女の瞳に、現実から逃げる事への嫌悪感、名前とイメージだけが一人歩き始めた事に、苛立ちとも寂しさとも焦りとも思える感情があるように思えた。
 

『スミレ』を聞いた時衝撃が走った。締め付けられた。本能的で官能的。
「作ったのは19歳の春。泣きながら初めてこの曲を書きました。ずっと、何か大きなものがモヤモヤしてたのが、その頃、解決ではないけれどよく見えるようになって、凄く強烈な季節でした。悟ったって感じ?」

2年歌い続けて来て、この歌に対して当時と気持ちの変化もあったのでしょう。
「自分にとってはどんどん懐かしいような感覚になってる。最初の頃は、悲しさ、苦しみが多かったけど、それってやっぱり幸せな事なんだなって最近歌ってて思うようになった。私、人格がばらばらなんです。一貫性が無いんです。一番遠くのものと交わろうとするんです。一番出来なさそうなものをやろうとする、のに、地はそうじゃなかったり・・・自分でも分かんなくなることが多い。正反対な事ばかりやったり。つらい時に盛り上るとか。気持ちが悲しいと思ってる時にでも幸せだと思ったり、すごい幸せだと思った時にわりと悲しいなって思ったり。悲しい事辛い事を忘れようとしたり、ストレスたまった時にそれを解消しようとしたりするのは、すごく辛いんです、嫌いなんです。じっくり味わう、みたいな。つらい事が辛いと思えなくなった時は一番怖いと思うし。」

"辛い"というのも人間の大事な感情の一つだものね。ところで『スミレ』と言うタイトルはどこから?
「いつも私は曲を書く時にはまず風景画があるんです。それを自分で見てる時に曲が流れてくる。『スミレ』の絵は、青空と夕焼けの間を自分の魂がふわふわさまよってるような絵がずっとあって、その空色が印象的だったんですが、その不安定さが"スミレ"だったんです。曲作りに楽器は何も使いませんし作ろうとするのではなく、全部舞い降りて来るまで待つ人なんです。」

野に咲くスミレははかないけれどたくましい、潔い。花の持つイメージ、楽曲、清家千晶の三位がリンクして来る。