織田裕二
interview
2001/9/11
松山市内某所にて
今回のキャンぺーンでは、空き時間に鏡川や仁淀川の上流で水を飲んだり、くわがたを捕まえたり・・・四国の自然に触れた。10代20代の頃、海外へよく行ったが、行けば行くほど日本の良さが見えて来たという。「やっぱり日本で骨をうずめたいと思ってますよ。・・・あ、四国の川に骨まいたら怒られるよね(笑)。」なんて冗談も交えながら、話は続いた。
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SG『今、ここに君はいる』は、織田本人がメインキャスターを務めた「世界陸上」のテーマソング。多忙な中、早くから自分で歌詞を書くと宣言した。
「書きたかった事が既にあったんで、去年の秋、来年の世界陸上の話を聞いた時、もう歌詞はオレが書くって。今まで3回とも詞を書いてるんです。1回目の『FLY HIGHT』は、自分が選手になったつもりで想像で書いたもの。もっと高く飛びたい、という曲だったんですね。2回目の『together』っていうのは、お客さんとの一体感。陸上もお客さんのパワーをもらって自分のパフォーマンスを最高に引きだそうとするんですよ。お客さんが、『待ってました!』ってなると、『いや〜うれしいな、よし、返してやろう』ってなる。そして今回は、まず選手へエールを送ろうと思って書き始めたんだけど、選手の方とお話しする機会が増えて来ると、ジャンルはぜんぜん違うんだけど、考えてる事、やりに来てる事は一緒だって事に気付いた。何しに来たって言ったら、金メダル取りに来た、ベストを尽くしに来たって言うし。その日のためにコンディションを整えて、まるでライブやってるみたいだって。負けず嫌いな人が多くて、競うのが好きで、自分より強いヤツがいるならば、そいつを倒して自分がトップに立ちたい。それがダメでも自分のベストを尽くす。今、一生懸命やってる人、自分の限界に挑戦してる人の集まり。・・・ああ、なんだ一緒じゃねえかって。そしたら、オレはやっぱり、今、頑張ってる人を応援したいんだって思えてきて。自分にとっても『ああ、俺、頑張んなきゃ』って気持ちも入っちゃってるんだけど(笑)。今頑張れてる人って素敵だなって思うし、頑張れてない人はこれを聞いて頑張ろうって気になってくれたら、すごくいいなと思う。」
スポーツをする者も、ミュージシャンも、役者も、とにかく何かに一生懸命になっている人には、とある共通の精神が流れているように思う。しかしそれは何かに本気で向かった者にしか分からないこと。中途半端な“今”を送っている者には味わえないもの。
「今の積み重ねの過去だし、今何やってるかが未来につながるし。今を大事にしないと明日はないし、つまらない過去の積み重ねになっちゃわない様に。・・・それは誰の為って言ったら、自分の為なんですけど。一生懸命やったからと言って必ず成功する訳じゃないし、痛い思いもするし、オマエは出過ぎ!ガンって打たれるし。じゃあ大人しくしてりゃいいのかっていったら、そうじゃないでしょ。今の歴史を作ってるのは俺たちなんだ。次の未来を変えられるのも今生きている俺たちなんだよって、そう考えるとすごい事だなって。ちょっと時代がずれてれば出逢えてない人たちだし、だったら大事にしたいなって。」
『一期一会』の気持ちを大切にしているという。彼の職業には多方面の人と多様な出会いがある。ともすれば“出会い”に関して麻痺状態になりかねないと思う。だからこそ彼は気付いたのだろう。人が好きな人である。
「人の喜んでいる顔を見るのが幸せなんだよ。自分も元気が出る。一生懸命やったのに、人が嬉しそうじゃない、楽しくないなあって顔してるの見ても、しょぼんとなっちゃわない?あれ、だめなんだよなあ・・・でも、あの曲良かった、ライブ良かったとか、あの映画良かった、感動したとか言われると、やっぱそれはすごい喜び。ところが、映画、ドラマ、CDは全部出来あがったものを見てもらってるけど、ライブに関しては全く別、そこでお客さんと一緒に共同で作るもの。お客さんも乗せちゃえば面白いし、逆にアーティストを乗せちゃえばお客さんも得するんだけどね、今日はついでにもう1曲!なんつってね(笑)。一生懸命あおろうと思って空回りしたり、逆にしら〜っとやって帰ったり、それじゃ、プロじゃないしつまらんから、お客さんがわくわくしてくれるように作るよ。」
ミュージシャン、役者、キャスター・・・一つの体をマルチに使いこなす。バランスをとるのも大変だろう。偏ってしまう事もあるのでは?
「年がら年中アーティスト(歌手)やってる訳じゃなくて、役者やったりもしてるんで、それが中途半端になったりマイナスに働くようだったら、もう辞めた方がいいと思うんですよ。じゃあ歌手だけをやってない良さってなんだろうって考える。ボクはよく、映画やドラマに出てるけど、音楽に助けられることがたくさんあるんですよ。芝居をやる時に監督に、『このシーンは曲でいうとこういうイメージもってます』って具体的な曲名挙げて言う事が出来るし、『監督、実は言いにくいんだけど、ボクが芝居でイメージしたのはこの曲なんですよ。この曲のイメージで芝居をしてるから、この曲をバックにかけるとピッタリ合うでしょ』とかね。ウォークマンして曲に合わせながら、次はバラード、次はアップテンポの曲でいくか、って役のイメージしてた。それがね・・・以前は、自分の世界に入って集中したいから、サングラスしてウォークマン聞いてたら、それを時代劇でもなんでもやってたもんだから、『なんじゃこのこの生意気なガキは』ってよく言われたけど(笑)。
じゃあ役者やってるのが音楽にプラスになったり助けられることはないかなって、それを考えだしたのが、何年か前。それまでは音楽音楽音楽でやってたんだけど、それだと音楽だけやってる人に密度も時間もかなわないですよね。じゃ、なにか芝居をやってることが助けになることはないかなって探しだしたのが、前回の『ホワイト
アウト ツアー』。公開前に映像を10分間だけ貸してもらって、それをノーカットで映画と同じでっかいスクリーンで見せるんです。富樫って主人公が吹雪に巻きこまれて、ちょうどいいところで『シークレットランデブー』のイントロが始まり、生で歌いながら出てくるという演出。いや〜“音”とりにくかったけど(笑)。でもそれは両方やってる人じゃないとできないでしょ?」
好奇心・探究心の強い人。誠心誠意でぶつかってくるまっすぐな人。そんな彼がやってみたいと思うこと。それは「コンサート会場(西条市総合文化会館)の前の湧き水をドラム缶に入れて帰る」ことだったりもする。「人間の体はほとんど水で出来てるから、水がいいってことは、絶対身体にいいってことですからね。」惜しげもなく向けてくる“ニッコリ”に、こちらの頬も緩む。彼のコンサートには裏表のないたくさんの“ニッコリ”が集まる事だろう。
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