|
|
|
|
「コンサートに馳せる想い」 誰にでも忘れられない思い出があるように、ミュージックシーンにおいても忘れられない歌や、アーティストがいる。氷室京介―それは今の日本を動かすおおよそ殆どの若者達が共感・共鳴できる数少ないアーティストの一人だ。彼は常に私達ファンの前ではベストである。堂々たる立ち振るまい、圧倒的な存在感、音楽と向き合う誠実さなど数え出せばきりがないが、彼の一言一句にファンが魅了されるように、あえて氷室京介の魅力を取り上げるとすれば“生き方のカッコ良さ”であろう。「そんな大したもんじゃないよ…」とHimrockには笑い飛ばされそうだけど…。 「7年ぶりの全国ホールツアー」 10/18、14作目となるアルバム「beat haze odyssey」をリリースと同時に全国ツアーをスタート。7年ぶりとあって、どんなステージを見せてくれるのか?四国のファンにとっては待ち遠しいかぎりだった。前作「MELLOW」からは実に8ヵ月という短いインターバルでリリースとなった今作、タイトルにも入っている「beat」という言葉通りライブの橋渡し的曲も含まれている。8ビートあり、シャッフル系あり、バラードありと、ロックに不可欠な要素が全て詰まったアルバムは、今までの確立されたコンセプトの中で作られた作品とは違う、氷室京介の素の部分が見える一枚だ。だからこそ今回のツアーがとても楽しみであり、併せて彼のスタンダード・愛すべきナンバーの数々を直に聴けることをとても嬉しく思った。 「This is Himrock!」 ファットボーイ・スリムのSEが流れる中、高まるボルテージ。何せ7年ぶりの高松とあって、彼を待つ私達もついつい力が入ってしまう。今や遅しと待ちわびる客席からは、各々のコンサートに対する強い思い入れが伝わってくる。客電がパッと落ちると会場からはざわめきが消え、くい入るようにステージを見つめる観客たち。暗闇に現れたメンバー、まだ氷室は現れない。ステージ中央に明かりがつくと『Bringing da noise』がスタートした。「オォォォ…!」という観客の声と同時に氷室京介が登場した。総立ちで迎える客席、妖艶な光の中で真黒の衣装に身を包み、サングラスを会場に投げ捨て、のっけからハイテンションで熱唱する氷室。その姿は雄大で、眩しいほどの存在感を放っている。そのままのテンションで2曲目『Sleepless Night』が終わるまでは鳥肌が立ちっぱなし。そして氷室の第一声は―「高松baby、帰ってきたぜ!!」。この言葉を実に7年間も持っていた。「長らく来てなかったから心配してたけど、相変わらず熱いゼ!」その一言に導かれるように『Love & Game』ではさらに会場のテンションが加速する。「もっとさわごうゼ!ここをライブハウスにしよう!!」…客席の声もまた一段と大きくなっていく。走り出したら止まらない状態の『Drive』、『Lost Weekend』、NEW ALBUMからしっとりとかつ力強い『幻想と真実』、飛んで・跳ねて『Girls Be Glamorous』。次から次へとオーディエンスを盛り上げ、そして頂点を目指して突っ走る氷室のスーパーヴォイスは、まさに夢の世界へと連れて行ってくれるようだ。ほとばしるエナジーは進化した8ビートに乗り、会場のテンションもMAXへ。ヒートアップして帯びた会場の熱を冷ますように始まったのはギタリスト・スティーブのソロ演奏。情熱的で心地よいリフ。強くもあり優しくもあるスティーブのギターに会場全体が聴き入っていた。流れるように、続いて10曲目『堕天使』へ。幻想的な雰囲気の中、バラード系の曲が続く。中でも『Loverユs day』は最高だった。そして『Still The One』、前作のアルバムの中で氷室自身が気に入っているという『Sillent Blue』、海の水面をイメージしたようなブルーの映像がバックに映し出され、そこには一つの世界が存在しているようにも見えた。『Stay』、『Native Stranger』と続き、コンサートが終盤に差しかかると、『Jealousyを眠らせて』で会場の雰囲気は一変、爆発的なギター&ベース、ドラム音と共に再びボルテージは最高潮へ…。『No More Fiction』、『Wild At Night』、「金が全ての世の中じゃないぞー!!」と『Taste Of Money』。本編ラストはやっぱりこの曲、氷室が一番大切にしている8ビート『Angel』。もう皆が笑顔だった。お腹の底から声を振り絞って歌っている。ステージと客席の心地よい呼応。この一体感がたまらない。身体全身がゾクゾクして、叶わないながらもこの曲が終わってしまわないことを願った。 本編終了後、すぐさま巻き起こるヒムロコール、『Angel』の余韻が冷めやまぬうちにステージに現れ、アコースティックナンバーの中でメンバーの紹介。「静かな状態で紹介したかった」という氷室ならではの配慮からは、メンバーへの深い信頼感が伝わってきた。割れんばかりの拍手でファンもそれに応える…。『Believe』、『So Far So Close』、鳴り止まぬ拍手で2度目のアンコール。『Summer Game』、『Sex & Clash & Rockユn Roll』、『Shake The Fake』と3曲を披露し、「サンキュ!」と言って潔くステージ袖へと消えて行った氷室京介。その引き際の良さもまた格別にカッコ良かった。まるで一つの映画でも見たような濃厚で肉厚なステージ、まさにパーフェクト。20世紀最後に、彼のライブを見れたことを本当に幸せだと感じた。 「21世紀へ…」 「皆のアツイ部分を見るとエネルギーをもらえる」と言った氷室。だからこそ今回のセットリストはテレビで有名になった曲よりも、ライブで有名になった曲が中心だった。もっと近くでファンのエネルギーを感じるために…。今やビート系ヴォーカリストの筆頭であり、コンポーザー、アレンジャー、サウンドメーカーと、あらゆる位置付けを持つ氷室だが、あえてアリーナクラスの会場だけを選ばず、地方のホールを廻る部分に彼の器のでかさと、音楽に対する意欲(ヤル気)を強く感じた。しかしながら彼にとってはこれも一つの通過点にすぎない事、懐の深さはまだまだ測り知れない…。 年齢を感じさせないパワフルなステージと、磨き抜かれた数々の曲、新世紀にはどんなパフォーマンスを見せてくれるのか?今からもう次のツアーが待ち遠しくてしょうがない。 |
|
|